教育における女性優位が結婚市場に与える影響

近年、多くの国で、従来の男性優位の教育格差が逆転し、女性がより高い学歴を持つ傾向が強まっている。この変化は、家族のあり方に広範な影響を及ぼし、従来の結婚形成パターンを揺るがし、結婚や出産の結果にも影響を与える可能性がある。本研究では、結婚市場の変化を通じて、教育における女性優位が家族形成に及ぼす影響を検証する。

本研究の実証戦略として、フィンランドで段階的に実施された大規模な学校改革を利用する。この改革は、女性の相対的な教育水準を向上させたものである。私は、この改革への結婚市場の曝露と結婚・出生結果との関係を簡易形モデルで分析した。

結果として、教育における女性優位が大きい結婚市場では、男性の子どもの数が減少し、40歳までにパートナーを持つ可能性が低くなることが示された。さらに、これらの結果は主に、男性と女性の教育達成度の分布の不一致によって引き起こされていることを示唆する証拠を提供する。また、この教育格差の影響は、低学歴の男性の健康行動や精神的健康に対して負の影響を与える可能性がある。

社会のジェンダー平等と出生率の間にU字型のパターンがあるという説は、時間を超えて社会を比較した場合、支持が弱い。

背景: 近年の人口動態に関するいくつかの理論では、ジェンダー平等と出生率の間にU字型の関係があると示唆されている。すなわち、ジェンダー平等の水準が低い社会と高い社会では出生率が高く、移行期において出生率が低下すると理論づけられている。

目的: 本研究は、ジェンダー平等(女性の政治的エンパワーメントを指標とする)と出生率の関係を、35か国のジェンダー平等と出生率に関する年次データを用いて、社会内での時間的変化に着目して推定することを目的とする。

結果: 時間の経過に伴う社会の変化を分析したところ、ジェンダー平等と出生率の間にU字型の関係があるという証拠は見られなかった。一方で、最近の時点における国ごとの横断的な分析では、U字型の関係が観察された。社会内での分析では、ジェンダー平等が低い水準にある場合に出生率との間に明確な負の関係が見られたが、ジェンダー平等が高い社会では特定のパターンは確認されなかった。

貢献: ジェンダー平等の向上に伴い出生率が上昇するという理論は、各国の時間的変化に関する分析では支持されなかった。本研究の結果の示唆とその頑健性について議論する。